躰道とは
変幻自在の技を展開する
アクロバティック武道
躰道とは、沖縄に生まれた祝嶺正献最高師範が、幼少時から学んだ沖縄空手を母体として、昭和40年に創始した武道です。
躰道は、主体的な人間を現代社会で育成し、武道修行によって得たものを社会へ還元することを目指します。
躰道の歴史
大正14年 祝嶺正献最高師範は沖縄で生まれました。幼少時より、佐渡山安恒先生、岸本祖孝に師事し、手(ティー;沖縄空手)を学び、第二次世界大戦では日本海軍の特殊潜航艇「蛟龍」の特攻隊員として、「沖縄近海で作戦行動中の敵艦を撃破せよ」との内命を受け、山口県の海軍柳井潜水艦基地で待機していました。
特殊潜航艇とは、所謂、“人間魚雷”であり、爆弾を積んだ潜水艦で敵艦に体当たりをする特攻でした。潜水艦と言っても一人が乗り込めるだけの大きさで舵も殆ど効かないものでした。
昭和20年 当時の戦況は、「敵軍の連合艦隊が沖縄本島を完全に包囲し、集中砲火を浴びせて上陸した直後であり、主力艦隊そのものは浮遊機雷や橋梁に使う鉄製の浮標でバリケードをはりまわし、日本海軍の水中からの攻撃に対し万全の防備を固めていたので、そのバリケードに阻まれ事前に触発し自爆自滅してしまい、主力艦隊を撃破することは不可能」であり、敵側が断然優勢の状況でした。
生まれ故郷の沖縄が戦場となり、多くの同胞が戦禍にまきこまれている惨状を想像しながら、最高師範は執念深く敵艦を撃破する一撃必中の攻法を練っていました。
絶命の辞を浄書したあと、特攻隊員として真剣に死を全うする方法を考え続けていましたが、練りに練った我流の戦法は、複雑な心情から生まれた単純そのものの動作でした。
「ぐるぐる回ってでも進みたい、
どったんばったん跳ねてでも当たりたい、
ばったばった伏せても潜りたい、
ぎゅうぎゅう捻ってでも倒したい、
ころころ転がってでも攻めたい」
などと思ってもがき、その動作や仕草が攻法につながるものと信じていました。戦後十数年を経て、躰道の形態や技法となる旋技、運技、変技、捻技、転技の発想は、この情緒からでた表出や仕草のなかにありました。
昭和21年大分県南海部郡明治村の山中、昭和23年沖縄県国頭郡久志村の海上にある無人島で運技・ 変技・転技の一部を創作して昭和24年静岡県伊東市において実技を初めて公開。
昭和28年から約10年間 玄制流空手道として東京を中心に大学・自衛隊・会社団体等120余りの関係道場で実験的に指導するなかで、新武道を創造するための基礎的な内容を整え、
昭和37年に旋技・捻技を完成し、各技をまとめて「躰道」と称するようになりました。
昭和38年「躰道」として旋・運・変・捻・転の実技を科学的に解明するために人間の存在、社会の状態、宇宙の処理等と、武道における公理の根源要素、法形完成の思想との相関関係を基に原理化をはかり、
昭和40年に動功<操体の原理>制御<相剋の原理>体気<呼吸の原理>法形<体・制・玄>経穴<陰陽の調整>などと「物理像」「生理像」「心理像」「情緒像」を一元的に体系化して「躰道」を集大成しました。
躰道の術技
躰道は体軸(胴体と頭の部分)の動きを5つに分類し、それぞれ旋技、運技、変技、捻技、転技と呼んでいます。基本の動きは5種類ですが、5種類の体軸の動きが生み出す技は無限です。
旋技(せんぎ)
体軸をコマの様に旋回させながら、攻撃と防御を同時に行います。
静岡県伊東市にある祝嶺正献最高師範のお墓。墓碑には、躰道五条訓と辞世の句が刻まれている。
湯河原町躰道協会が主催するTaido Junior Camp in Izuでは、湯河原町以外からも多くの子供達が参加し、合宿終了後に参加者全員で最高師範のお墓にお参りした。
運技(うんぎ)
体軸を波の様に上下させながら、攻撃と防御を同時に行います。
変技(へんぎ)
体軸を倒木状に倒しながら、攻撃と防御を同時に行います。
捻技(ねんぎ)
体軸を渦のように体を捻りながら、攻撃と防御を同時に行います。
転技(てんぎ)
体を球の様に回転しながら、攻撃と防御を同時に行います。
躰道の競技
躰道の競技は、大きくは法形、実戦、展開の3種類に分けられます。法形、実戦は1対1で競技する個人法形、個人実戦と5人1チームで競技する団体法形、団体実戦があります。
展開は主役1人が脇役5人を30秒以内に倒すシナリオと技の難易度を競う競技です。
法形(ほうけい)
個人法形競技(exfitTVより)
団体法形競技(exfitTVより)
実戦(じっせん)
個人実戦競技(exfitTVより)
展開(てんかい)
展開競技(exfitTVより)
何故、躰道なのか?
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躰道は全身を使った運動で、身体能力を高めます
躰道では体の動きを5つに分類します。5つの動きを訓練することで、全身をバランス良く鍛え、身体能力を高めます。若く元気な年代の方にはアクロバティックな動きを中心に、体力が自信がなくなった年代の方には呼吸法を使ったゆったりとした動きを中心に訓練しますので、子供から大人まで、全ての年代で稽古できます。
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躰道は論理的思考を鍛えます
躰道では反射的、感情的に相手の動きに対応するのではなく、『思考⇨判断⇨方法⇨結果⇨反省』のプロセスを経て、術技を施します。躰道は道場での訓練だけではなく、社会で躰道の理念・理論を実践します。日常生活でも『思考⇨判断⇨方法⇨結果⇨反省』のプロセスで行動をするようになると物事を論理的に思考する習慣が身につきます。学校の勉強、ビジネスなど全てにおいて、論理的思考は必要です。
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躰道は集中力を高めます
呼吸と技の一致、技と体の一致を常に意識して、訓練することで集中力が高まります。集中力を高めることで、記憶力の向上、学習効率の向上、ビジネス効率向上など、様々なシーンで役立ちます。
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躰道は瞬時の判断力を鍛えます
武道は武士達が戦場での命を懸けた戦いの中から生まれました。一瞬の判断の過ちが自らの生死に直結する。現代武道では命を懸ける戦いはありませんが、競技という疑似体験の中で判断力を鍛えます。特に躰道の技はスピーディかつ変幻自在の技が特徴です。その中で瞬時の判断力(直視判断力)を鍛えます。
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躰道は心を鍛えます
武道では古来より仁(優しさ・思いやり)、義(約束を守る)、礼(礼儀)、智(智慧)、信(人から信頼されること)の『五常の徳』が求められています。これは躰道でも同様です。さらに躰道では、調和と創造を重んじます。
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躰道は調和を重んじます
躰道はただ単に相手を倒せば良いというのではなく、相手と調和することから始めます。競技においても同様です。「始め」の号令とともに相手を倒しに行くことはなく、まずは運足を用いて、相手と調和します。そこから連動連体の攻防が始まります。「共存のための調和」それが躰道の原点でもあります。
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躰道は創造力を鍛えます
「躰道は創造と破壊を繰り返しながら、弁証法的に発展する」
「人類は共栄のために創造を必要とする」
どちらも祝嶺正献最高師範のお言葉です。躰道では一定の理論の元での新技創作が認められています。躰道は常に進化し続けます。そして、人類も社会も進化し続けています。社会生活でも想像力と創造力は必要不可欠なスキルです。